マイ・ライフ・アズ・ア・ブック My Life as a Book

ティーバラこと田原弘毅のブックレビュー。 2003年から読んだ海外小説の感想をつらつらと。

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ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』

・ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』(河出書房新社)

 シモンズを最初に読んだのは10年くらい前で、角川文庫の短篇集『愛死』だった。その後『カーリーの歌』(ハヤカワNV)とかに流れたため、未だにシモンズがSF作家だという認識が「ない」。
 本書を読んだらますます「SF作家じゃないなあ」という思いが強くなった。超常の説明を全くしないところがSFというよりダークファンタジーに近接していると思う。というかその手の短篇を集中的にセレクトしているようだ。
 哀切でかつ忌まわしい冒頭の「黄泉の川が逆流する」を皮切りに、90年代の吸血鬼小説としては屈指であろう巻末の「バンコクに死す」まで、悪夢の大盤ぶるまい。
 どうにか光明が見られるのは、ジョナサン・キャロルが書いたのかと思わせる「ケリー・ダールを探して」と「最後のクラス写真」(このラストは秀逸)くらいで(でも内容は両者ともグロテスク)、あとはもうひどいものばかり。もちろんいい意味でだが。
 最もひどいのは「ベトナムランド優待券」、これはまさに奇想の名に恥じない。「ドラキュラの子供たち」もひどさでは無類で、「なんだかどこかで読んだな」と思っていたら長篇化された『夜の子供たち』をずっと前に読んでいたのだった(短篇の方が完成度が高いかも)。
 表題作の「夜更けのエントロピー」は陰惨なコメディーとでも言うべきか。やはり現実は最も恐ろしい。常軌を逸した部分も陰惨な描写で、現実に立脚した箇所も忌まわしく、八方ふさがり。
 既出の短篇集やアンソロジーとかぶっている短篇も多いので、個人的にはやや☆は辛いが、シモンズを最初に読むなら最適かも。しかし『愛死』は当時としては斬新な短篇集だったのだな。

☆☆☆2005年11月8日読了

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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